ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

アマゾンジャパンがポイント還元サービスを発表。狙いは?【no.1710】

 先週の金曜日(2月22日)のことですが、アマゾンジャパンがAmazonの通販全商品に1パーセント以上のポイント還元をおこなうことを発表しました。今回のECMJコラムは市場環境の変化の話。

*5月から全商品がポイント1パーセントに

 Amazonでは、これまで直販の一部の商品についてだけポイントの還元をしていましたが、5月下旬から外部事業者の出品も含め、全商品にポイント付与をすることになります。そしてそのポイントの負担はAmazonではなくAmazonに出品している事業者になります。

 もちろんAmazonとしてはEコマースのユーザーにもっとAmazonを利用してもらうための策であり、それは出品者である事業者にも販売機会の拡大として還元されることなのですが、ポイント原資の負担を一方的に出品者側に押し付けている感もあり、そこは課題の焦点になりそうということです。

 これは独占禁止法の「優位的地位の乱用」にあたる可能性があるということです。つまり、プラットフォーマーが小作人に対してのルールをどんどん変更するのはおかしいんじゃないの?という話です。

 ただ、インターネットのビジネスを何年かやっている方ならおわかりのとおり、ルールはプラットフォーマーが変えまくるのが普通です。一般的なリアルビジネスに比べても急激な変化があります。Googleの検索アルゴリズムなんか最たるものです。検索アルゴリズムが動くだけで事業が立ちいかなくなる会社すらあります。

 まあ、プラットフォーマーが右から左を向いただけで収益が悪化してしまうビジネスモデルもどうなの?という話でもありますが、今回のECMJコラムがポイントにしたいのはここではありません。

*ユーザーの獲得の方法をAmazonが変えてきた理由

 Amazon=ポイント還元みたいなイメージを持っているユーザーは少ないのではないかと思います。楽天市場やYahoo!ショッピングのようなインターネットのショッピングモール、CCCのTカードのようなポイントカード、ビックカメラやヤマダ電機のような家電量販店のイメージが強いのではないでしょうか。これまでのAmazonのユーザー獲得はポイント以外の部分に軸がありました。

 Amazonのユーザー獲得サービスといえば、Amazonプライムです。年間3,900円を支払えば様々なサービスを受けることができます。Amazon商品の送料無料の他、プライムビデオの利用、Amazonミュージックの利用、本やマンガや雑誌が読み放題のプライムリーディングなんてサービスもあります。Amazonプライムとそこに紐づくサービスと機能の便利さからAmazonをメインにEコマースをおこなうようになったユーザーが多いのではないでしょうか。

 今回、Amazonがポイント還元のサービスを始めるということは、Amazonプライム会員で狙っていた顧客層から他の顧客層に切り替えたことが考えられます。Amazonプライムのサービスで獲得できるユーザーが頭打ちになっているのかもしれません。

*楽天ユーザーはAmazonユーザーに流れるのか

 日本におけるEコマースの市場を二分しているのがAmazonと楽天市場です。Amazonの勢力拡大が著しいですが、楽天市場のユーザーもまだまだたくさんいます。楽天ユーザーを支えている大きな要因に、ポイント還元イベントの面白さがあります。ポイントが常に残っているから楽天市場を離れられないというユーザーも多いかもしれません。「どこでポイントを貯めるか」が選択動機にもなっています。

 ポイント還元サービスを始めることで楽天ユーザーがAmazonユーザーに流れていくのか、ここがまずは今回の方針変更のポイントになると思います。また実は楽天市場側もAmazonの特徴に近づけるようなショッピングの方針を打ち出しています。両者のモデルが少しずつ近づいているのです。市場の需要は頭打ちになり、いよいよ本当のパイの取り合いが始まるのかもしれません。

カテゴリー: 0.ECMJコラムALL, 9.Eコマースこぼれ話

ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。情報産業経営者稲門会役員。日本道経会理事。 UdemyにてECマーケティング講座配信中。 こちらから