声をかける人が誰かによって『訴求力』は変わる【no.1274】
(前回はこちら)
「七海さんの場合『七海さん!>友花里さん!>そこのあなた!>加奈さん!』、友花里さんの場合『友花里さん!>加奈さん!=七海さん!>そこのあなた!』
これが『訴求力』を理解する上で重要なんです」
麻間(あさま)さんの言葉に七海さんと友花里さんはキョトンとした顔をしました。七海さんがいいました。
「えっと。麻間さん、どういうことですか。私だったら『七海』って呼ばれたら振り向く、友花里だったら『友花里』って呼ばれたら振り向く、ふたつとも全然普通のことだと思うんですけど、『訴求力』に繋がる部分ってあるんですか?」
七海さんの言葉に友花里さんもウンウンと頷きました。麻間さんはホワイトボードに書いてある「七海さん!>友花里さん!>そこのあなた!>加奈さん!」と「友花里さん!>加奈さん!=七海さん!>そこのあなた!」を指さしていいました。
「七海さん、いいですか。このふたつを見比べて、どんな違いがあるか私に教えてください」
七海さんはホワイトボードの前に移動して、文字を指しながらいいました。
「まずひとつ目。私は『七海さん!』で友花里は『友花里さん!』なので一緒。ふたつ目・・」
七海さんが「ふたつ目」を言いかけたとき、麻間さんがそれを手で制しました。
「いま、七海さんは『七海さん!』と『友花里さん!』が一緒って言いましたよね。どこが一緒なんですか?両方とも『七海さん!』だったら一緒ですけれども、『七海さん!』と『友花里さん!』、言葉自体が違っているじゃないですか」
麻間さんの指摘に七海さんは唖然としました。「いやいや、そういう意味じゃなくて・・」思わず声が出ます。その様子をみていた友花里さんがいいました。
「私、『訴求力』について何かがわかった気がします。七海がいっていることも間違ってない。七海がいっているのは『自分の名前を呼ばれたら振り向く』ということで、それは七海も私も答えは一緒でした。ただ、麻間さんがいっているのは『七海』という言葉、『友花里』という言葉それ自体の違いについてですよね。もしかして麻間さんが伝えたいことって、『七海も私も振り向く言葉が違う』ってことなんじゃないかな」
「そうなんですよ、友花里さん。『訴求力』を深く理解する上で私が伝えたかったのは正にそこです。この『七海さん!』と『友花里さん!』、名前という点ではあくまで一緒ですが、言葉としてはまったく別物です。七海さんは『七海さん!』と声をかけられれば振り向き、友花里さんは『友花里さん!』と声をかけられれば振り向きます。七海さんは『加奈さん!』には振り向きませんが、友花里さんは『加奈さん!』に振り向きます。つまり、声をかける人が誰かによって『訴求力』は変わるということなんですね」
七海さんは麻間さんが伝えたかったことを理解し、ノートにメモを取っています。友花里さんは麻間さんの話をじっくり聞いていました。
「そう考えるとですよ、インターネットで『おつまみ 焼酎』と検索するお客様と、『笹かまぼこ お歳暮』と検索するお客様に同じ言葉で声をかけてしまわない方がいい、むしろ別々の声をかけた方が『訴求力』が高いというのはわかりますよね。『おつまみ 焼酎』と探すお客様と『笹かまぼこ お歳暮』と探すお客様はそもそも目的が違うわけですから、その目的を適えられるような広告文を作成したいわけです」
「・・というと、けっこう文章、考えなきゃいけないですよね」
七海さんがいいました。麻間さんがこたえます。
「そうなります」
つづきはこちら。
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