飽きていたのは石田さんだけでした。 【no.0154】
(前回のコラムを読まれていない方は、まずこちらからお読みください)
石田さんは、毎晩、その日、自分が仕事でやったことをメモしていました。そして、毎朝、データを確認していました。そうするうちに、B美さんをどういう風に押すと、どんな効果が返ってくるのかが、なんとなくわかるようになっていきました。
*B美さんが出ているメガネ歴女オーディションサイト
B美さんのゴリ押しを続けていたおかげで、メガネ歴女サイトにアクセスしたユーザーは必ずB美さんの顔を覚えてくれるようになりました。広告や広報のプロモーションも、徹底してB美さんにスポットを当てていたので、B美さんの名前を憶えてくれる人も増えてきました。今までは、「メガネ歴女オーディションサイトのB美さん」という認知でしたが、「B美さんが出ているメガネ歴女オーディションサイト」というふうに、次第に人からの認識が変わってきました。
石田さんは思いました。マイドル(my+idolの造語、石田さんの芸能事務所名であり、メガネ歴女オーディションサイトの名前)なんて誰も名前を覚えてくれてないだろうなー。でもB美さんの名前はみんなが知ってくれ始めている。そうだ。ある人が言っていたじゃないか。「人はavexではなく、安室奈美恵を知る」「ユニクロではなく、フリースを知る」と。まずはユーザーにコンテンツを知ってもらい、そのコンテンツを軸として、ブランドを知ってもらうのが、マーケティングの流れなのではないか。となると、マイドルを知ってもらうことより、もっともっとB美さんを知ってもらう方が先だ。
*石田さんは「定量的」に候補生を判断していた!
石田さんはこれまでにも増してB美さんをゴリ押しするようになりました。B美さんのパワーは絶大でした。なにせ、このころには、オーディションサイトのアイドル候補生は500人に達していましたから、500人から選ばれた1人の逸材です。しかも、石田さんは、毎朝、アイドル候補生たちへのサイトアクセスに対する反応(レスポンス)をデータとして見ていましたから、「なんとなくC絵さんよりもまだB美さんの方が良さそうだな」のような「定性的」ではなく、「C絵さんのパワーが80だとしたら、B美さんのパワーは87だな」というように「定量的」に候補生を判断することができていました。
B美さんの露出はどんどん増えましたが、その人気は衰えを知りません。B美さんの個人ページへのアクセス数は当初の100人から1,000人を超えましたが、ユーザーからのレスポンスが落ちることはありませんでした。石田さんは、もう半年以上もB美さんをゴリ押しし続けていましたし、毎日のようにB美さんのことばかり考えていましたから、正直、完全に飽きていました。「まー、これくらいで限界かなぁ。そろそろB美さんにもみんな飽きたべ」と思っていたのですが、とっくに飽きているのは石田さんだけで、まだまだB美さん自体を知らない人、その魅力に気づいていない人はたくさんいるのでした。「商い=飽きない」とは良く言ったものです。飽きずに(飽きても)続けることが大切なのだなと思いました。
*石田さんはマイドルのデータを見ていて気付いた
B美さんの勢いは衰えず、B美さんのおかげで「マイドル」の名前も広く知れ渡ってきましたが、石田さんには少々不安がありました。これは、ある日マイドルのデータを見ていて気付いたことなのですが、サイトにアクセスするユーザーは増えているものの、それに対してB美さんの個人ページ以外にアクセスする人がやけに少ないのです。以前からマイドルを見てくれているコアなユーザーではなく、初めてマイドルにアクセスするユーザーが増えたため、仕方ないことなのではありますが、これでは、万が一B美さんの人気が凋落したら、マイドルという芸能事務所が成り立たなくなってしまいます。
そこで、石田さんは考えました・・
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