数字が跳ねた裏側には、必ず理由が隠されている。【no.1057】
ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら)
翌朝、七海さんと友花里さんはいつものようにおにぎり水産に出勤をしました。麻間(あさま)さんに教えてもらったように、ふたりは毎日「実行数値管理表」にデータを入力し、前日の施策の振り返りと原因と結果の因果関係をディスカッションしています。
おにぎり水産ネットショップ「笹かまおにぎり」のシステム管理画面を確認すると、異常値が出ていることにすぐ気がつきました。昨日の売上、10万円。笹かまおにぎりのデイリーの売上は平均して3万円ほど。月商も100万円に届くか届かないか、というところでした。それがいきなり3倍もの売上が出たのです。
七海さんと友花里さんはお互いのエクセルにデータを入力すると、椅子を並べて毎日の10分会議を始めました。これも麻間さんに教えてもらったことです。「実行数値管理表」を入力した後、前日の数字について10分間、ネットショップ運営チームでミーティングを行うのです。おにぎり水産の場合、チームメンバーは七海さんと友花里さんのふたりです。
「昨日の数字、見たよね?」。七海さんが最初に切り出しました。
「見た見た。10万円なんて数字初めて見たからビックリしちゃった。1万円の間違いじゃないかと思って、何回も見返しちゃったしね。昨日、帰るときにちらっとメールボックスを見たら、注文メールがたくさんきてたからもしかしたらとは思っていたんだけどね」
友花里さんが「実行数値管理表」を見ながらいいました。確かに、いままでは5桁の数字が並んでいます。日によっては4桁の数字(つまり、5,000円や6,000円)の売上の日もあります。それが100,000円とは、驚きでした。
「もしかして、だれか大量に買ってくれたお客様がいたんじゃない?前に売上が10万円に近づいた日があったじゃん。あの日も、たしか5万円分くらい買ってくれたお客様がいたんだよね」
七海さんはそういうと、パソコンのあるデスクに椅子をすべらせました。七海さんの後を追って、友花里さんもパソコンのモニターがみえる位置に移動をしました。
七海さんはネットショップの管理画面にアクセスし、「注文詳細」の画面を開きました。日次の欄に前日の日付を入れて確認のボタンを押すと、前日の注文がずらっと並びます。前日の注文数は20件でした。いつもの笹かまおにぎりの注文数に比べると、やっぱり多い数字です。七海さんは1件1件の注文の詳細画面をみながらいいました。
「う~ん。そんなに大量購入をしたお客様がいたって感じではないかぁ。昨日の売上は10万円、注文数が20件、客単価は5,000円ってことになるから、これっていつもの客単価のデータとあんまり変わらないんだよね。飛びぬけてたくさん購入してくれたお客様がいたときは、客単価が異常値になるからわかりやすいんだけども」
七海さんが詳細画面を確認していても、3万円、5万円といった大口の注文はなさそうでした。
「でも、数字が上がった。しかもいつもよりも異常に跳ねたってことは、何かそれを引き起こした理由があったってことだよね。いつも麻間さんが言ってるじゃない。数字が動くってことは、数字が動くだけの理由があったってことだって」
友花里さんの言葉に耳をかたむけながら、七海さんは詳細画面を見ていました。1件1件の注文をクリックする手を止めて、七海さんはいいました。
「でもさ、昨日って私たち、ほとんど鬼切社長とミーティングしてたわけだし、週末の発送をするので手一杯だったから、何か施策をやったわけじゃないよ」
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