あなたをプロの世界にいざなう「魔法の薬」。その4【no.0990】
ここからは野球選手になったつもりでブログをお読みください・・(前回はこちら)
自分は期待されている。両親からも、友人からも、マスコミからも。そして、入団したチームの監督やコーチ、スタッフ、チームメイトからも。あの3本のホームランは自分の実力で打ったものではないのに・・。
そう思うと、あなたは不安で眠れなくなります。
もうあの薬には頼りたくない。でも、頼らないと結果が出ないような気がする。だから、やっぱりあの薬を飲んでおきたい。とにかく、みんなの期待を裏切るのだけは嫌だ。そして、自分自身の本当の実力に失望するのも嫌だ―――
予想どおり、シーズン前の段階でプロの世界についていけないのが明らかなものとなりました。プロのピッチャーの球威に押され、バットに当たったボールが遠くに飛ばないのです。ホームランどころか、外野にすらボールが届かないことさえあります。
まず、チームのコーチ、チームメイトがそれに気がつきました。そしてそれは監督に伝わります。次にマスコミが気づき始めました。自分が疑いの目で見られているのがわかります。自分は自分の本当の実力がわかっていますから、自信を持って跳ね返すこともできません。
あなたは、男に連絡を取ることを決断しました。しかし、男は電話に出ません。時間をおいて電話をかけましたが、また男は電話に出ません。さらに時間をおいて電話をかけたところ、やっと男は電話に出ました。ガヤガヤという音から、どうやら男は外にいるようでした。
「●●君、電話に出られなくて申し訳ないね。プロ時野球のシーズン前は忙しいんだ。なんでかって。君みたいな選手がプロの世界にはたくさんいるだろう。私を頼って連絡をしてくるわけだ。●●君が電話をかけてきた理由もそれだろう?」
「はい」
あなたは小さな声で、ゆっくりとこたえました。
「ただね。申し訳ないのだが、去年渡したあの薬はもう私の手元にはないんだよ。あのときはたまたま私の手元に流れてきただけで、いまはもう使い果たしてしまったんだ。次に薬が入ってくる目途はたっていないよ。でも、もうシーズンも始まってしまうから、●●君も困るよなぁ」
「そうなんです。ボールが全然前に飛ばないんです。監督やコーチからも、失望の目で見られているのが練習中でわかるんです。なんとか、あの薬をいただくことはできないでしょうか。不安で眠れないんです」
「方法は、ないことは、ない」
男は強い口調でいいました。その瞬間、あなたの心に小さな光が生まれます。
「薬を流してくれた知人に連絡を取ろう。あの薬は海外のものだからね。海外に在庫がないか、彼に頼めば探してもらうことができる。ただし、今回はタダってわけにはいかないよ。まずは手付金として30万円でどうかな」
お金の話を出され、あなたは一瞬戸惑いました。返答に迷っていると、男はいいました。
「プロになってたくさんお金をもらったんだろう。●●君。新聞には契約金が5,000万円と書いてあったぞ。私のような貧乏人には一生手にできないお金だ。君はもうプロの選手なんだから、たくさん活躍して、たくさん稼げばいい。好きな車を買って、好きな女と遊べばいい。そのための投資なんだから、30万円なんて安いもんじゃないか。30万円が1年後には1,000万円、2,000万円に化けるんだから」
男の説得以上に、プロについていけるかという不安もありました。あなたはいいました。
「すいません。じゃあ、30万円でお願いします。振込先を教えてください」
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