ネットショップのあるあるストーリー。【no.0212】
ネットショップのあるあるストーリー、その壱。
おにぎり水産は、宮城県に本社を置く老舗の水産加工業者です。メインの商品は笹かまぼこ。70年前から人気の商品で、全国のスーパーやコンビニに商品を卸しています。しかし、昨今の不況。原材料の金額が高騰。卸先からの圧力「仕入れ値下げてよ。でないとPB商品に変えるよ」。そして、笹かまぼこを食べる世代が少しずつ減ってきているという事実。おにぎり水産の鬼切社長は、インターネットでの販売を決断しました。「卸とバッティングするのはマズいので、『オニー』ブランドの笹かまぼことして売り出そう!」。直販化することによって、より利益を確保しようというわけです。
おにぎり水産は、ショッピングモールに出店することにしました。理由は、今までショッピングモールの営業さんが頑張って何度も訪問してくれていたからです。隣町のわかめ水産が、同じショッピングモールに出店していて、月商200万円ほど売れていると耳にしたのも理由でした。ショッピングモールに出店すれば、全国からお客様がやってくる。今までは、卸先と工場併設の店舗でしか売ることができなかったが、これで日本中から注文が入ってくるはずだ。鬼切社長は胸をおどらせました。
社内にパソコンを触れるスタッフはほぼ皆無なのですが、ショッピングモールの営業さんは「大丈夫です。素人でも売れている店があります!」と自信を持って言います。ひとまず、事務の静子さんはパソコンが使えそうなので、静子さんにネットショップの担当をしてもらうことにしました。ショッピングモールのマニュアルに沿ってネットショップを作って、「オニー」ブランドの笹かまぼこの商品を売り出しました。さー、全国から注文がくるぞぉ!
鬼切社長は朝礼で、おにぎり水産のスタッフに告げました。
「えー、我々おにぎり水産も、ついにインターネット販売を始めることになりました。全国からたくさんの注文がやってきます。心の準備をしておいてください。物流担当の佐藤さん、忙しくなりますよぉ!それではみなさん、今日もよろしくお願いします!まずは社訓の唱和から・・」
しかし、ネットショップ開店初日、お客様の注文はきませんでした。1週間たっても注文はきませんでした。1ヵ月たったころ、1件の注文がきました。注文したのは、おにぎり水産がネットショップをスタートしたことを知った、上京して大学に通っている鬼切社長の息子でした。「なんとか親父を励まそうと思ってさ」。
最初はネットショップからの注文を気にしていたおにぎり水産のスタッフ達でしたが、次第にネットショップをやっていることすら忘れていきました。しかし、忘れていないのは鬼切社長と、一応のネットショップ担当である静子さんです。鬼切社長はショッピングモールの営業さんを呼び寄せ、相談することにしました。このとき、おにぎり水産に来たのは、あの営業さんではない人だったのですが・・(この人誰だ?)
コンサルタントを名乗る担当者は言いました。
「鬼切社長、ネットショップが売れない原因は、ネットショップへのアクセスが足りないからですね。アクセスを増やすための施策を打たなければいけません。まずアクセスを増やし、商品を売ります。そうすると、その商品がランキングに入ります。お客様がランキングを見てくれて、さらに笹かまぼこへのアクセスが増え、商品が売れていきます。アクセスが増えたり、商品が売れれば、メールマガジンに登録するお客様も増えますので、リピーターに対して訴求をすることができます。みんなそういう風にして成功しています」
ショッピングモールの担当者は一気にまくし立てました。鬼切社長は言っている意味がわかりません。知らない横文字ばかりです。かといって、「それってどういう意味?」とひとつひとつ聞くのも憚られます。「ふーん、なるほど」と、ひとまず知っているふりをして、鬼切社長はショッピングモールの担当者に聞きました。
「それで、何すればいいの?」
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