顧客属性ごとの「食パワー」基準値を設定していく。 【no.0144】
(前回はこちら)
データを活用して、廃棄率75%減を実現した、スシローのデータマーケティングを解明しよう・・の第九回です。
前回からマーケティングの「運用」の話に入りました。まずは入店したお客様の「食パワー」を定義するところから、マーケティングはスタートします。
*「食パワー」を定義する3つの方法
午前11時に回転寿司の営業が始まりました。開店直後に、本日の1組目として1名のお客様(仮名:石田さん)が来店しました。まずは、この石田さんの「食パワー」を定義しましょう。その方法として、以下の3つが考えられます。
1.まったくお客様の属性をセグメントせず、お客様の「食パワー」を設定する方法。
過去の注文データを集計し、1来店あたり1人のお客様がどれくらいの食事をするか、その平均値を出す。「どれくらい食事をするか=食パワー」となる。1来店で1人のお客様が食事をしたメニューの「商品パワー」を合計し、その合計値が「食パワー」となる。
例えば、Aさんが、まぐろ(寿司:商品パワー10)、いか(寿司:商品パワー10)、きつねうどん(うどん:商品パワー20)、鶏のから揚げ(一品:商品パワー15)を注文した場合、合計値:55がお客様の「食パワー」となる。この平均値が、お客様の来店時に設定する「食パワー」となる。
2.会員カードやアプリでの会員登録があり、顧客IDを持っているお客様に「食パワー」を設定する方法。
この場合は、顧客IDから過去の来店時にどのような食事をしたか、データを引き出すことができる。過去に来店したときの、「商品パワー」の合計値を来店回数で割ると、1来店あたりの「食パワー」を算出することができる。「食パワー」の計算方法は、上記と同じ。顧客IDは個々人に振り分けられたものであるため、お客様の属性をセグメントせずに「食パワー」を設定するよりも、正確なデータマーケティングが可能になる。
3.お客様をテーブルに案内する際に、スタッフがお客様の属性を端末に入力し「食パワー」を定義する方法。
顧客IDはない、かといってお客様の属性をまったくセグメントせず「食パワー」を定義すると、大人と子供の「食パワー」が一緒になってしまうではないか、という場合。スタッフがお客様グループを見極めて、大人2人(40代男女)、子供2人(男子高校生と女子小学生)というように、属性を設定し、お客様もしくはお客様グループの「食パワー」を設定します。
*グループが来店したときの難点。誰が食べたのか
ここで困るのが、3.のように、お客様グループの属性を設定したとしても、寿司をレーンから取ったデータは「位置ID」としてしか残らないので、回転レーンからとった寿司を、「実際に誰が食べたか」がわからないということです。お客様が1人1組で来店するならば、回転レーンから取った寿司を誰が食べたかは明確ですが、2人以上の組であれば、その「位置ID」のお客様が寿司を取ったことまではわかっても、誰が食べたかを明確に知ることができません。もしかしたら、みんなでシェアした可能性もありますしね。
こうなると、40代男性、40代女性、男子高校生、女子小学生の各々の「食パワー」をどれくらいに設定すれば良いのか、グループの過去のデータからは見えなくなってしまいます。顧客IDがあり顧客属性のデータがあれば「食パワー」の設定は容易です。顧客IDがないからといって、過去のすべてのデータの平均から、大人の子供の「食パワー」を同じに扱うこともできません。この課題の解決をするためには、お客様のサンプリングをして、顧客属性別にどのような食事をとるかを知る必要がありそうです。サンプリングをした結果として、40代男性、40代女性、男子高校生、女子小学生の「食パワー」の基準値を設定します。これでお客様が1人1組のときだけではなく、1組複数人の場合にも「食パワー」を算出することができます。
とはいえ、実際は、食べられる量って人によってかなり違うんですよね。私は小食なので回転寿司にいっても、7皿くらいしか食べることができません。一緒にいく友人は20皿くらい食べるんですよね。あくまで、入店時に設定する「食パワー」は基準値であり、お客様の食事の推移をみることで、食べる量を予測できるようになります。
つづきはこちら。
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