「やれないこと」を「やれない」とはっきり言える自信。【no.1075】
やれないことをやれないと言える。現実的にはこうだ、をはっきり言える。そういう人は信用がおけるし、もっと話を聞いてみたくなる人だと思う。業界やサービスの本質を知っているからこそ、「できてもここまでですよ」と言えるのだし、それは裏を返せば実力があるってことだ。
先日、ある経営者の方にお会いした。知人に紹介されて伺った交流会で知り合った方で、オフィスが誓いのでランチでもしましょうという話になったのだ。この経営者はスマホアプリの開発・運用をサポートする会社を営んでいる。
いま、ある飲食店のアプリの運用改善に取り組んでいる。日本人のほとんどが知っていると思われる飲食店だ。アプリの開発が終わり、飲食店側の担当者と運用改善をおこなっているフェイズらしい。「アプリはリピーターをどうやって作っていくか、くらいが関の山ですよ」という意見に、なるほどなと思った。
現在の取り組みとしてはこうだ。飲食店のアプリを入れてくれたお客様にリピートしてもらうためにはどうすればいいか。まずはリピーターの定義をつくる。アプリを入れてくれたお客様に3か月以内に2回目の利用をしてもらうためには。これが指標になる。3か月以内に2回目をしてくれた方の数が「KPI」となる。ここを目指して改善活動をする。
限られた顧客情報からのお客様のセグメンテーション。そこにクーポンやキャンペーン告知などの販促を当てていく。どのタイミングで販促を提案するのが効果的か。ここは「データを取ってカイゼンの繰り返し」だ。同じように「20円引き」のクーポンを好むお客様もいれば、「1個無料」のクーポンに反応するお客様もいる。クーポンを提案するタイミングによっても変わるし、利用可能期間の設定によっても結果は変わる。成果から細かい反応をチューニングして、KPIに向かっての最適な方法を探していくのだ。ここはネットショップでもWEBサービスでもアプリ運用でも一緒。
「アプリはリピーターをどうやって作るか、くらいが関の山」。ただ、これをきっちり「やり切れ」ているだけでも十分。そして、アプリはリピーターをつくることしかできないとはっきり言い切ることができるあたりも、非常に信用ができる方だと思った。
いまとなってはみんなが気づいていること。アプリを作っても新規顧客を集客することはできない。アプリを作ったからといって、新しいお客様がサービスに興味を持ってくれるわけではないということ。つい3年くらい前までは、「アプリを作ったら、新しいお客様が増えますよ」といって営業している会社がたくさんあった。いまもあるのかもしれない。
ホームページを作ったら全国から問い合わせがきますよ、も同じだし、ネットショップを立ち上げたら日本中から注文が入ってきますよ、も一緒。大切なのはWEBサイト(アプリも)を立ち上げてから、それをどうやって運用していくかなのに、知ってか知らずかその本質を無視して、「作ればハッピー」に話の方向を向けてしまっている。いまだったら、「越境ECのWEBサイトを作ると、世界中から注文が入ってきますよ」だろうか。
WEBの世界はまだまだ多くの人にとって未知の世界。情報格差がとんでもなくあるし、ネットショップを立ち上げたら全国から注文が来ると思っている人も、まだたくさんいます。あまたのWEB会社がある中で、どうやって信用できる人を見つけるか。逆に、信用をしてもらうか。WEBにもっともっと必要なのは、「信用」。情報発信を、続けるしかないですよね。
おわり。
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