「インターネットって全然親切じゃないよね」という金言。【no.0072】
■ネットショップをやる仕組みはどんどん簡単になる‥!
私が前職(ネットショップ専業のベンチャー企業)に入社したときは、楽天市場のシステムはまだ昔の旧RMSで、ヤフーショッピングのシステムも旧ストアマネージャーでした。知っている方もいると思いますが、新ストアマネージャーに移動するときにサーバーがパンクする前のストアマネージャーね。もう本当に大変だったんだから、あれ。昼間は完全にサーバーがパンクして、一切サイト更新作業が反映されないから、夜の22時に出勤して朝の10時に退勤しておりました。スタッフ全体の朝礼に出て、そのまま「お疲れ様でした」みたいな。
あの当時から比べると、HTMLの組み方や、写真の加工や、データベースソフトの使い勝手とかはあんまり変わってない気がするんだけど、やっぱりイーコマース事業を行うためのインフラってのはだいぶ簡単になってきた。インスタントECのSTORES.jpとかBASEなんかみたいなサービスも出てきてるし、ネットショップ構築や運営のお助け系ソリューションもたくさん出てきてますよね。正直、もうまったく全てを把握できておりませんが、テクノロジーの発展と市場の拡大もあって、これからもたくさんのサービスが出てくることでしょう。
ヤフーショッピングも個人向けのネットショップ構築システムを開発しているようですが、キャプチャを見たところによると、STORES.jpのような仕組みになるのかなという感じですね。ある程度決まったテンプレートをいくつか用意しておいて、見せ方の部分ではカスタマイズが可能、HTMLの要素をできるだけ省いて、個人の方でも運用しやすいように、圧倒的に劣った感じのページにならないように、という感じでしょう。個人の出店依頼も35,000件ほどきているようですが、この数字の発表自体が10/21時点(つまり、1か月前!?)のことなので、さらに1万件以上増えているのは間違いないでしょう。
■参入のしやすさは、成功のしやすさではない‥!?
で、ネットショップ構築の仕組みが楽になったり、お助け系ソリューションがたくさん出てきて、ネットショップへの参入はどんどんしやすくなってきて、これからさらに参入のハードルは下がってくると思うんだけど、それによってネットショップでの出店がどんどんしやすくなった、ということでは全くないんだよねー。ここを直視できるかがとても重要なところ。
インターネット上にネットショップを出したら、自然に売上が伸びて「ハッピー」なんてことはありまえません。ここは、どのセミナー・講演でもお話しすることなんだけども、まだ(おそらく時代遅れのどっかの業者が言ってるんだろうね)そう思っている人もいるようだし、そう思ってると必ず不幸な結末が待っているので、改めて触れておきます。ネットショップを出したからって、世界中の人がサイトを見に来てくれて、自然に売上が伸びていくなんてことはありません。
■「インターネットって全然親切じゃないよね」とは‥!?
で、インターネット上にネットショップを出すことをどう考えて欲しいかというと、ネットショップを出すことによって「品評会に出た」「オーディションの場に立てた」程度に考えられるといいと思うんですよね。これ、例えば、楽天市場で「りんご」って検索するとするじゃない。そうすると、480,000件以上の検索結果が出てくるわけ。もちろん、食べもののりんごもあれば、飲みものになっているりんごもあるだろうし、りんご型のストラップもあるだろうし、まあいろいろありますわな。
ただ、お客様が「りんごが食べたいなぁ」と思って、「楽天市場でりんごを食べよう」と思って、楽天市場のサイトにやってきて、「りんご」って調べたら、その品評会には480,000件の「りんご」がずらーっと並ぶことになるんです。しかも、最初の30件くらいは視界に入っているものの、480,000件目のりんごさんなんて顔さえみてもらえないわけでしょう。というか、たぶん100件目くらいのりんごさんから全く見てもらえなくなる。ちなみに、「りんご ジュース」で検索しても、35,000件ね。これも100件目くらいから見てもらえないでしょう。
なので、ヤフーショッピングへの参入がいかにしやすくなても、ネットショップで成功しやすくなったわけじゃないです。まあ、競争が激化して市場が拡大して新しいお客様が増えて、って流れにはなるだろうけども、全員が全員ハッピーにはなりえない。インターネットの世界って完全に経済の世界じゃないですか、リアルは政治の世界だけれども。誰だっけかな、誰かが言ってました。「インターネットって全然親切じゃないよね」って。
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「セブンアンドアイのオムニチャネル化構想は、本質的なビジネスモデル変化のメッセージである」とは‥!?
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