「コストを抑えてスタートして、数字が見えてきたら本腰を」は本当に可能なのか?【no.0403】
ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら)
「そうなんですよ。これって『必要経費』なんだろうな、と思ったんですよ。って、猪井氏(いいし)先生、先に言わないでくださいよ」
猪井氏先生は、「すまんすまん」というように、手のひらを少し上げました。
「まあ、ええところに気づいたようじゃな。二子(にこ)社長もええ話をしたと思う。新規事業に取り掛かろうとするとき、『黒字になるなら担当を付けたい』とか『売上が出るなら担当を付けたい』という経営者は多いんじゃ。それは、ネットショップとかインターネットの仕事に限ったことではない。新しいことにチャレンジしようとするときに、経営者はみんな同じ壁に当たるんじゃ。『本当に数字が出るのか』というな」
鬼切社長は、二子社長と話したときのことを思い出しながら、猪井氏先生の話を聞いていました。猪井氏先生は続けます。
「やっぱりな、経営者は事業に失敗したくない、赤字も出したくない。そうすると、できるだけコストを抑えてスタートして、数字が見えてきたら本腰を、と考える。経営者の心理としては当然だわな。しかし、ここで考えなければいけないことは、どのくらい本気で事業に取り組めば『数字が見えてくる』のか、というところじゃ。コストを抑えてスタートして、本当に『数字が見える』ところまで到達するのか。そもそも、きちんとした投資をしないことには、『数字が見える』ところにさえ到達しないのではないのか。そこじゃな。その点でいうと、新規事業における人件費は、『必要経費』なのではないかと、ワシは考えている」
猪井氏先生の言葉は、ひとつひとつに重みがあります。鬼切社長は改めてそれを感じました。やはり、人件費は「必要経費」。いままで、事務の静子さんに兼務でネットショップを担当してもらっていましたが、これからは専任で担当を付けようと思いました。おにぎり水産の製造メーカーとしての利益を投資するつもりで取り掛かるべきだ、と。
「まあ、運用コストはできるだけ下げたいところではありますけども、あくまで売上があってこその運用コストですからね。運用コストを先に気にするあまり、売上が伸びないんじゃ仕方ないですよね」
「お、鬼切はん、ええこと言うようになったな」
猪井氏先生にまた褒められ、鬼切社長はすっかり気分が良くなりました。それと同時に、また、鬼切社長の心の中の「ヤル気」の炎が激しく燃え上がってきました。
「んで、鬼切はん、この13%オーバーをどういう風にして考える?なんとしても利益を20%確保できるようにせないかんと思うんだけれども」
「そうですねぇ。ざっと数字を見ると、やっぱり気になるのが物流費の39%かなと思います。商品原価35%、システム利用料9%、人件費3%、広告費7%は、まず仕方がないところかと思うので、物流費の39%を26%にすることができれば、利益が20%確保できるようなるのではないかと」
そう言って、猪井氏先生の方を見ると、猪井氏先生は鬼切社長の方をじっと見ています。じっと見たあと、少し首を傾げて、「ホンマかな」と呟きました。
「鬼切はん、それってホンマかな?」
今度は明らかに鬼切社長に対して質問をするカタチで、「ホンマかな」が投げかけられてきました。
「いや、まあ、理論上は、っていう話ですけど、やっぱり物流費が厚すぎると思うので、13%を削れるのではないかと・・」
「うん、鬼切はんが言っていることはわかるよ。ボリュームとしては39%だからな、確かに多い気がするわ。ただ、こんな数字って、マーケティング戦略によって簡単に変わる部分なんじゃ。例えばな、物流費だけじゃなく、商品原価も一気に、しかも大幅に下げられる方法があるんじゃけど、鬼切はん、何だかわかる?」
「えっ!商品原価が下がる方法なんてあるんですか?商品原価は流石に下げられるものじゃないと考えていましたが」
「一応、聞いとくか?」
つづきはこちら。
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