ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

「ルール変更」により変更するのは、「施策」ではなく「係数」【no.0359】

 楽天市場の料金体系変更についての考え方。(前回はこちら

 前回のブログで、楽天市場の料金体系の変更と、今日から動きたい施策について書きました。楽天市場にネットショップを出店している事業者さんにとっては、この料金体系変更は決してテンションが上がる話ではないと思います。

 「楽天市場でのネットショップの運営がしづらくなるなぁ」「商品の値上げをしなくてはいけないかも」「できるだけ経費を抑えたい。ネットショップの担当者は他の業務と兼務をしてもらおう」などなど、いろんなことが頭の中をよぎることと思いますが、ちょっと待って下さい。この料金体系変更というひとつの「ルール変更」を、「運営施策の変更」と捉えてはいけません

 まず、今、楽天市場の出店者の皆さんがやらなくてはいけないのは、この「ルール変更」を現在のネットショップ運営に当てはめたときに、どれくらいの負担増(もしくは減)になるのか、正確に計算し、その実数を把握することです。先を憂いで、施策を変えることではありません。

 例えば、メールマガジンの配信についてです。今回の楽天市場の料金体系変更について、もっとも多くの出店者が反応したのは、おそらく「メール配信プランの無料配信枠の撤廃、そして有料化、メール配信1通あたり0.75円を加算する」という部分かと思います。この「ルール変更」によって、実施される2015年4月1日から「メールマガジンをできるだけ流さないようにしよう」「メール配信をやめよう」と考えた方がいるかもしれませんが、その考え方はやめてください。

 1万通のメールアドレスを保有しているネットショップがあるとします。これまでは、週に1度、メール配信の無料枠を使ってメルマガをお客様に送っていたのですが、これからは1通あたり0.75円がかかります。週1回、月4回のメール配信であれば、0.75円×1万通×4回で、負担増は3万円ということになります。ここで「月に3万円支払うことになるのなら‥」とメルマガの配信回数を3回、2回と絞っていくのは、早計だということです。

 ルールが変われば市場が変わります。市場が変われば競合も変わります。市場と競合が変わっていけば、データが変わっていきます。まずは、現状のメール配信において、1万通の配信を行うとどれくらいの反応があるのかを計測しましょう。ネットショップの売上がどれくらい増えるか、アクセスがどれくらい増えるか、受注件数がどれくらい増えるか。メール配信を行っていない日との対比から、おおまかな予測をつけてください。

 1万通のメルマガを配信して、無料から7,500円の負担増になるならば、原価率50%のネットショップではメルマガ配信による売上を15,000円アップさせれば、実質的な負担はなくなります。メルマガからの想定客単価が3,000円なら5件の受注、想定転換率が3%ならば166人のアクセスを上乗せされれば、負担がなくなるということです。「ルール変更」により変更しなくてはいけないのは、「施策」ではなく「係数」なのです。「係数」を変えずに、「施策」を変えてはいけません。

 今回の楽天市場の料金体系変更により、盲目的に「施策」を変更するネットショップがたくさん出てくると思います。もしも彼らがメール配信をやめ、楽天市場の全メール配信数が10%減ったならば、逆に自社のメール配信の効果が10%アップする可能性もありえます。また、楽天市場はメール配信の新しい機能として、より配信顧客のセグメンテーションができる機能の開発・リリースを示唆しています。

 メール配信が有料化になったからって、楽天市場でのネットショップ運営が儲からなくなると、果たして誰が決めたのでしょうか。儲かるか儲からないかは、「ルール変更後」の数字を取ってみないとわかりません。まずは「係数」を変えること。これをよく覚えておいてください。

 おわり。

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石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。情報産業経営者稲門会役員。日本道経会理事。 UdemyにてECマーケティング講座配信中。 こちらから