情報社会のビジネスは、「三方よし」でないと成長しない。【no.0309】
世の中には、「質量保存の法則」というものがありまして、あっちが立てばこっちが立たず、ということが往々にして起こります。中国の食肉工場のずさんな管理(と、それを扱っていたマクドナルドやファミリーマート)が問題になっていますが、企業の利益を確保しようとすればするほど、価格競争に勝とうとすればするほど、そのしわ寄せがどこか(基本的には消費者のはるか見えないところ)に行くわけです。この件については、直接的ではないにしろマクドナルドやファミリーマートにも少なからずの責任はあるはずです。
もはや昔の話になりますが、民主党を支持すれば子ども手当がもらえるのねラッキー!ということで、実際に子ども手当を受け取った方も多いとは思いますが、どこかの泉から自然にお金が湧いてくるなんてことは100%なく、やっぱりどこか(これも国民からは目立たないところ)からかお金を充当しているわけです。ワタミ、すき家がブラック企業と言われ、すき家の店員が1人で店舗を回していた(しかも社員でもないアルバイト)なんてことが問題視されていますが、価格競争・利益確保のためのしわ寄せ、あっちが立てばこっちが立たず、まさに「質量保存の法則」がなせる業と言うことができるでしょう。
もちろん、企業のたゆまぬ努力によって、差別性のある商品を開発し、社員に品性の教育を徹底させ、お客様・取引先・株主等々、様々なステークホルダーに対して付加価値を提供している会社については、あっちが立てばこっちが立たずという状態にはならず、継続的に価値を生み続けているという点からも「質量保存の法則」の理論が通じる限りではありません。ここはしっかりと申し上げておきたいと思います。
さて、この15年間で何が変わったかと言えば、人間が情報を取得するスタイルが変わりました。インターネットの登場、通信の発達、リテラシーの向上、ソーシャルメディアの登場やスマートフォンの普及も情報取得のスタイルを変化させる加速的な要因になっているかと思います。15年前はテレビ、ラジオ、新聞、雑誌という限られたメディアからだけ、情報を取得していました。15年経って、現在は人類総メディア化の時代です。1人1人が情報の発信者であり、かつ1人1人が情報の受信者である、しかも世界中の端から端まで即時に情報が行き届く、そんな時代でございます。
そんな時代の有益、もしくは弊害として「モノゴトの裏側」が見えるようになりました。これまで、特定のメディアの限られた枠(テレビなら放送時間、新聞なら紙面)からしか取得できなかった情報だけではなく、バイアスのかかっていない「モノゴトの裏側」の情報が、大量に、そして瞬時に取得できるようになりました。これまで既存メディアが制限をかけていた情報も、インターネット上で議論になることで、既存メディアで取り扱わざるを得ない、というような状況にもなっていると思います。
これまでは閉ざされた情報の中で、「売り手よし」「買い手よし」だけで成り立っていたビジネスは、ある意味「バレなきゃOK」という状態でした。しかし、「モノゴトの裏側」が見える時代は、「世間よし」の視点が重要になることに間違いありません。大量生産、大量消費、価格競争、そして効率化を求めすぎた弊害が、「世間よし」から少しずつ離れていき、結果として消費者から総スカンを食らうことに結果になってしまうのです。情報社会は「世間よし」の精神がなければビジネスを成長させ続けることはできません。「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」、これがまさに近江商人の「三方よし」の精神です。
昔、大ヒットした書籍に「食い逃げされてもバイトは雇うな」というものがありました。食い逃げされるリスクと損失よりも、バイトを雇うコストの方が高い、だから「食い逃げされてもバイトは雇うな」というわけです。経済合理性だけを追求すれば、それで良いのかもしれません。しかし、もし店舗が食い逃げ犯を追わなかったとしたら、「きちんとお金を払っているお客様」は、決していい気分はしません。そこには「世間よし」が欠けている、ということになります。これからは、「食い逃げされるなら、バイトは雇え」の時代です。でないと、世界中に拡散され、炎上してしまいます。
おわり。
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