猪井氏先生、鬼切社長に突然の提案をする。【no.0270】
ネットショップのあるあるストーリー、その壱つづき。(前回はこちら)
トゥルルルル・・トゥルルルル・・
「はい。鬼切ですが」
「あー、鬼切はん。猪井氏(いいし)ですー」
「あっ!猪井氏先生!」
それは、あのミーティングから半月ぶりに聞く猪井氏先生の声でした。
「鬼切はん、宿題の進捗はどうじゃろか、と思うて。きっと、鬼切はんのことだから、真面目に考え込んでるんじゃないかなとー」
猪井氏先生は、鬼切社長のことを心配して、自ら電話をかけてきてくれたのでした。「困ったら電話して」というメモを渡していた猪井氏先生でしたが、自分から電話をかけてきてくれるのも猪井氏先生の優しさからでした。鬼切社長はこれまでの経緯を簡単に説明しました。
「・・ということで、考え込んでいると思考停止してしまうので、毎日、事務所・工場・実店舗をグルグル回るようにして、お客様のイメージを妄想しております。まだ、こういう方、というイメージは見つからないですね」
「ほほぉー。現場を見続けることで、何かヒントがないかと考えてるんじゃな。それはいい心がけじゃ。ワシからのヒント、っていうわけでもないんじゃが、実店舗のレジに1週間くらい立ってみんか?もちろん、アルバイトの子はおるだろうし、おにぎり水産の社長としての仕事はあると思うんじゃけど、そういうのは、店を閉めて、会社のスタッフが返ってから1人で残業すればなんとかなるじゃろ」
猪井氏先生からの提案なので、そこに何か意味があるのだろうと思いましたが、鬼切社長は直観的に「実店舗のレジに立つのは面倒だな」と思いました。
「しかしー、私、レジの仕組みはわからないですし、接客もしたことがないですから、現場の迷惑になると思うんですよ。それに、私のようなオジサンがレジに立っていても、お客様は嬉しくないでしょうし。やっぱり、そこは接客に慣れているアルバイトの方に任せた方がいいんじゃないかと思うんですよね」
鬼切社長は、できるだけ「面倒くさい」という雰囲気を悟られないように、もっともらしい理由をつけて猪井氏先生の提案を避けようとしました。
「鬼切はーん、それはダメじゃ。1週間でいいから、店に立ってみいって。鬼切はんが面倒くさい気持ちはわかる。レジとか接客とか新しいことも覚えて慣れなきゃいかんしな。しかし、外側から見てるだけじゃ、お客様のことは何にもわからん。わかるのは表情と何を買ったかだけじゃ。1週間どっぷり実店舗に浸かってみいや。必ずわかることあるはずじゃて。逆に、そんな良い環境もなかなかないで。お客様と直に接せられるゆう」
鬼切社長はこれ以上の言い訳を重ねても、猪井氏先生の要求を避けることはできないと感じました。「おにぎり水産ネットショップのお客様」を考える上で、実店舗で直にお客様と接することを猪井氏先生が重要なポイントにしていることがなんとなくわかったからです。前回のミーティングで、鬼切社長が実店舗の存在を猪井氏先生に話したとき、猪井氏先生が顎をさすりながら話を聞いていた理由はここだったのでした。
鬼切社長は1週間、工場併設の実店舗である「笹かまオニギリ」のレジ&接客担当になること決意しました。「笹かまオニギリ」のレジ&接客担当のアルバイトである、七海さんと友花里さんにそのことを話すと「社長、いきなりどうしたんですか?」と驚かれましたが、理由を話すと、「社長に直に実店舗のお客様の意見を聞いてもらえるとは嬉しいですー!」と喜ばれました。社内のスタッフにも、鬼切社長が1週間「笹かまオニギリ」のレジ&接客担当を行うことを伝えました。基本的には、どっぷり実店舗に浸かるため、外部からの連絡については出張扱いとして取り合って欲しいという指示を出しました。
さあ、七海さん、友花里さん、鬼切社長の3人での「笹かまオニギリ」のスタートです。
つづきはこちら。
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