「わかった」を探していくのが、仕事というもの。【no.0259】
ネットショップのあるあるストーリー、その壱つづき。(前回はこちら)
その振りで「『わからない』が正解」と言われても困る・・鬼切社長はそう思いましたが、ひとまず猪井氏(いいし)先生の意見を聞いてみようと思いました。
「えっと、どういうことですか。その状況的にも文脈的にも父の日の方が売れる、が正解だと思ったのですが・・」
「そこじゃな。まずは・・」
「鬼切はんの意見を聞こか!はここはやめてくださいよ」
鬼切社長は、「お」まで開いた猪井氏先生の口をふさぐように言いました。猪井氏先生は「怒られた」と言わんばかりに、ペロっと下を出して(女子高生か!)頷きました。
「まあ、ワシから振った話じゃし、ワシが話さないかんな。確かに、鬼切はんの言うとおり、新聞の一面に父の日の広告を入れるのと、新聞の端っこに母の日の広告を入れるのでは、父の日の広告の方が売れる気がする。ただ、そこは『気がする』ゆうだけじゃ。『気がする』は『売れる』と言い切る根拠にはならんわな」
「まあ、確かにそうですね・・」
「母の日と父の日を比べると需要は母の日の方が高い。ただ、そこにどのくらいの差があるかはわからない。新聞の一面に父の日の広告を出すのと、新聞の端っこに母の日の広告を出すのは、一面に父の日の広告を出す方が良さそうな気がする。これも、そこにどのくらいの差があるのかはわからないわけじゃ。後者については、どっちが売れるかすら、明確じゃないわけじゃな。これ、どうやったら明確になるか、わかるか?」
「いや、どうですかね。なんか、やってみないとわからない気がしますね」
「そう!『やってみないとわからない』んじゃ。いい言葉じゃな。『やってみないとわからない』って。ただ、この場合は『やってみてもわからない』可能性の方が高い。なぜなら、条件が揃ってないからじゃ」
「つまり、新聞の一面の広告と端っこの広告という条件、父の日と母の日という条件の2つが複合的に混ざり合っているからということですか?」
猪井氏先生は満面の笑みで答えました。
「鬼切はんは賢いなぁ~。鬼切はんの言う通りじゃ。この場合、新聞の一面の広告に母の日と父の日、新聞の端っこに母の日と父の日、合計4回の広告を出しておかないと正しい検証が出来ないわけじゃ。これをすることではじめて、どっちが売れるかが『わかる』状態になるわけじゃな」
「そう考えると、グルメ特大号、母の日広告、父の日広告の各々の比較はできないわけか・・」
鬼切社長は寂しそうにつぶやきました。
「そうなんじゃ。あくまで仮説としての結論しか出せない。まあ、全部の広告を同条件で行うことはできないはずじゃから、どれも仮説になってしまうんじゃけどな、その『気がする』の仮説から、いかにして『わかった』を探していくかが、仕事というものじゃろ」
「まあ、そうですねー。同じように笹かまぼこを売っていても、条件はいろいろ変わっているもんなんですね。そういえば、この笹かまぼこ5枚セットも、最初980円(送料無料)で売っていたのを、途中から780円(送料無料)で売り始めたんで、ネットショップの中の条件もそもそも変わっているんですよね」
えええ~っ!!猪井氏先生は椅子からひっくり返りそうになりました。
「安っ!笹かまぼこが5枚セットで980円なんて安すぎじゃろ。この前、ワシの近所のスーパーなんか、5枚で2,000円じゃったぞ。ブランドものかもしれんけども。しかも、送料無料なんか言うたら、ほぼほぼ利益出てないんと違う?しかも780円まで値下げて」
「まあ、恥ずかしながらそうなんですよね。完全なる赤字です。ショッピングモールの担当者も、『まずは新規顧客を獲得するところからですよ』って言うてたんで、調子に乗って攻めてしまい、つい。こんなにリピートしてもらえないとは思わんかったもんで」
「あのな、鬼切はん、ええか。あんた、お客さんの集め方、間違っとるで」
つづきはこちら。
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